Claude Code v2.1.139(2026年5月11日リリース)で、/goal コマンドと「agent view」が追加された。/goal は完了条件(completion condition)をClaudeに渡す仕組みで、条件を満たすまでターンをまたいで動き続ける。agent viewのほうは、複数のClaude Codeセッションを1画面で俯瞰するUIで、claude agents で起動する。本稿では実機で3日試した運用感を、ノード移行作業を題材に整理する。
/goal は「指示」ではなく「完了条件」を渡す
これまでのプロンプトは「これをやって」という指示文だった。/goal で渡すのは「これが満たされたら終了」という終端条件だ。インタラクティブモードでも、-p のヘッドレス実行でも、Remote Controlでも使える。動作中は経過時間(elapsed)、ターン数(turns)、トークン数(tokens)がオーバーレイで表示されるので、暴走に気付きやすい。
公式ドキュメントは /goal を「verifiable end state(検証可能な終端状態)」のある作業に使えと案内している。挙げられている具体例は、コード移行を「全呼び出し箇所がコンパイルを通るまで」進める、バックログを空になるまで処理する、設計書を受け入れ基準を満たすまで書く、といったものだ。
「指示文」ではこの再現は難しい。「呼び出し全部直して」だと、どこで止まるかはClaudeの判断に依存する。/goal は、終端条件を契約として渡すことで、その曖昧さを構造的に潰しに行く設計と言える。
ノード移行を題材にした実機検証
筆者は社内のNode.js 16→22への小規模移行で挙動を比較した。対象は42ファイル、require を import に書き換えるのが主作業。
- 通常モードで「
requireをimportに直して」と頼んだ場合、8ターン目に「主要ファイルを修正しました」で停止。残り14ファイルが手付かずだった。 /goal "全ファイルでrequireをimportに統一し、npm test がエラーなしで完走するまで"を渡した場合、17ターン継続し、最後にテスト通過を確認して停止。所要時間は23分。
通常モードでは「まだ残ってる」と返すたびに数ファイルずつ直す不毛なラリーになるが、/goal 側はテスト実行結果を自分で確認するまで止まらない。これが「verifiable end state」が効くポイントだ。
効くタスクと、効かないタスクの線引き
/goal が効くのは、「終わり」が機械的に判定できるタスクだ。テスト通過、リント通過、ファイル列挙、移行率100%といった条件。逆に効きにくいのは、「いい感じの設計に直して」のような曖昧条件で、Claudeは自分の解釈で「これでいいだろう」と止まる確率が上がる。これは指示文時代の挙動とそう変わらない。
/goal の真価は、テストファイルとの組み合わせにある印象がある。検証可能性をエンジニア側が事前に仕込んでおくと、Claudeはそこに向かって淡々と動く。雑な指示で動かせば、雑なところで止まる。
制約条件の併記が効く
もう一点重要なのが、「制約条件の併記」だ。公式ドキュメントは、終端状態だけでなく、変更してはいけないファイルや守ってほしい原則を /goal 内に明示することを推奨している。
筆者の検証でも、「package.jsonは触らない」「テストファイル自体は変更しない」と書いた条件下では、Claudeは自走中もその線を踏み越えなかった。逆に何も書かないと、関係ない設定ファイルにまで手が伸びる場面があった。終端条件と禁止条件はセットで書く運用が無難だ。
agent viewとの併用
/goal をいくつかのセッションでバラ撒くと、「いま誰が何をやってるか」が分からなくなる。ここでagent viewが効く。3つの作業を並行で /goal に任せ、agent viewで進捗を眺める運用に切り替えてみた。
1日でやった作業の体感生産量は、目視で1.7倍くらい(雑な計測なので参考値)。「人間が手を動かす時間」と「Claudeを監督する時間」の比率が、後者寄りに傾いた感覚はある。これまで tmux の4ペインで運用していた管理コストが減ったのも体感として大きい。
ただし、agent viewは「ブロックされているセッション」を強調表示してくれるが、ブロック発生から表示までに数秒のラグがある。連続で4セッション走らせていると、どれが詰まったのか一瞬迷う場面があった。慣れの問題ではあるが、ヘビーに並行運用する前提なら認識しておきたい挙動だ。
推奨アクション
- テスト通過・リント通過など「終端条件が機械的に判定できる」作業から
/goalを試す /goalの中に「変更禁止ファイル」「守るべき原則」を併記し、自走時の暴走を抑制する- 並行作業が増えてきたら
claude agentsでagent viewを開き、/goalセッションをまとめて監督する
/goal を1週間使った率直な感想は、「Claudeとのやり取りが指示ベースから契約ベースに移行した」というものだ。終端条件を契約として渡し、Claudeはその達成までを請け負う。途中で止まらないというのは、監督コストが減ると言い換えてもいい。
ただ、銀の弾丸ではない。完了条件をきちんと書ける作業にしか効かないため、「完了条件を言語化する力」が、これからのClaude運用者の核心スキルになりそうだ。

